ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

人の迷宮【10-3-3】

テンムスは

商店街でもないのに

どうしてこんなにも

人がいるのだろうと

思っていた

まるで都市間の

迷宮防壁のように

人々は

彼女の行手を阻んだ

よくよく見てみると

街は何やら

お祭りをやっているようだった

そして皆

何かに酔って

奇妙な踊りをしたり

奇行が目立っていた

辺りには霧とともに

何らかの煙が

立ち込めていた

テンムスは人の迷路を抜け

人通りを外れたところにいる

若者たちに話かけてみるが

会話にならなかった

代わりにパイプか何かを

勧められたが彼女は断った

街は独特の匂いが充満しており

時々頭痛や吐き気に苛まれた

少し気分が悪くなったテンムスは

街の外れの潮風の当たる

崖の上で涼むことにした

しばらく休んでいると

人の気配を感じた

木の上を見てみると

絵本を読む少女が

テンムスに気づいて

にっこり笑った


── 人の迷宮を抜けて辿り着いたのは、地底帝国の詩。