チャンスを掴め【10-3-2】
さっきまで
こんなに人は
居なかったはずじゃ
テンムスは
不思議に思ったが
取り留めて
深く考えはしなかった
でもこんなに人が
たくさんいるんじゃ
なかなか骨が折れるわね
一方のダンジョウは
老婆シソウメの持つ
鏡の断片を
譲ってもらう方法を
考えていた
しかしながら
静かすぎる時は
海上にかかる霧のように
まばらに空中に
浮かんで溶けてゆく
もうずっと
黄昏時が続いている様な
そんな気分だ
そうだ
その人を探しに行こうよ
え
少年の突然の提案に
シソウメは戸惑った
待っていても
チャンスはやって来ないんだよ
って父さんがよく言っていた
うふふ
何が面白いの
いやね
こんな生活で退屈していたから
久しぶりに面白いこと
聞いたと思ってね
そんなに面白いかなぁ
違うわよ
可笑しいの面白いじゃなくて
刺激をもらえて面白くなったの
ワクワクする方ね
ただね
残念なことに
脚を悪くしてしまって
思うように歩けないの
車椅子なら
持って来ているよ
ダンジョウは自信満々に言った
── 始めの一歩、地底帝国の詩。