ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

着火心火【15-1-1】

 この世界で生きていて

 徳なんてないさ

 どんどん

 つらくてみすぼらしい思いになる

 けれどもそのなかの

 ほんの何気ないことに

 幸せを感じることだって

 あるんだぜ

 少なくとも

 俺はそのために毎日を生きている

 その積み重ねが

 大きな幸せに繋がるんだ

 コヴさん

 アンタはそれを放棄して

 楽になろうとしただけだ

 

 楽してなにが悪い!

 一番手っ取り早く

 効率的な方法じゃないか!

 


 楽して手に入れたものほど

 指の隙間からこぼれ落ちて

 ゆくものさ

 まるで砂のようにな

 気づいたら手元には

 何も残っていないんだよ

 俺が新人の頃

 コヴさんが教えてくれたんだぜ

 真実はどんな道の先にもあるって

 そのために

 自分の信じた道を突き進め

 アンタの選んだ道は

 正しいかも知れない

 けれども

 もう進むことは

 やめてしまったんだな

 俺は…それがいちばん悲しい

 後ろを向きながらでもいいから

 進んでいて欲しかったな…

 

 取り込み中申し訳ないが

 好きにはさせないよ!

 

チュローズは床から

蔓を出して

ウナージュとシャッケイを

捉えようとした

しかし

蔓は床から出てくる前に

焼け焦げてしまった

 


 なに?!

 

チュローズは驚愕した

 


 俺がただ喋っているだけかと思ったのか?

 そりゃあ甘いぜ、薔薇のねぇちゃん

 迂闊に俺に近づくと…火傷するぜ?

 


シャッケイが

キザなセリフを口走ると

ダンジョウたちの蔓も

燃えて焼け落ちた

 


── 炎のような熱い男、地底帝国の詩。