ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

鏡の断片 Ⅱ【10-2-3】

どこに行ったんだよ

こんな気味の悪いところで

ひとりにしないでくれよ

テンムスに

マインド・ダイヴを試みたが

あたかもこの世から

居なくなってしまったかのように

反応しなかった

まるで雲をも掴む感覚だった

ダンジョウの不安は

最高潮に達した

テンムスとはぐれてしまった

ダンジョウは

辺りの家の扉を一件一軒

片っ端から開けていった

もちろん彼女は探せども

見つかるはずもなかった

ダンジョウの精神状態は

極限状態を迎えた

またもや過去の

置いてけぼりにされた記憶が

鮮明に蘇ってきた

いやだ

ひとりにしないでくれ

ダンジョウは無我夢中になって

街を彷徨った

もうだめかと思ったとき

開いた扉の向こうには

人影が見えた

ひとりの老婆が

ロッキングチェアを揺らしながら

深く腰掛けていた

見つめる方角は

今まで出会った老人たちとは

異なっていた

そして

彼女の腕のなかには

鏡の断片が

抱き抱えられていた


── 半信半疑の安心感、地底帝国の詩。