ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

物理実験室【9-1-2】

ダンジョウたちは

物理実験室に着くと

その光景に目を疑った

巻き貝型マシンの影響か

一帯の壁は吹き飛んでおり

部屋は瓦礫に塗れていた

先程までゾニィと会話をしていた

研究員たちは

瓦礫の下敷きになっていた

そんな

おい大丈夫か

ゾニィは駆け寄ると

はは

お前のことを悪く言ったから

罰が当たったかもな

やっと上に戻れると思ったのにな

おい死なないでくれ

もう身体の感覚がないな

みんなお前を頼りにしていたんだよ

むしろ頼りにし過ぎていて

おれたちは何もしていなかったんだな

今更後悔しても遅いよな

自分で出来ることを見つけて

やっていかないと

生き残ってはいけないんだよな

だからこのザマさ

もうこれ以上仲間が死ぬのは

見たくない

ゾニィは涙を堪えきれなかった

ガタン

同じフロアの部屋から

物音が聞こえた

恐らく公社直属の

騎兵部隊だろうな

現場の処理をしにきたんだろう

お前らは早く逃げるんだ

でも

いいから行くんだよ

お前はおれたちの希望なんだ

上の連中が知らないことを

お前が後世に語り継ぐんだ

おれたちが出来なかったことを

代わりにやってくれ

はは

最後まで頼りっぱなしだったな

ゾニィは後退りしながら振り返り

ダクトの方へ向かった

ダンジョウたちも

ゾニィに続いて

ダクトへ入って行った


── 今生の別れ、地底帝国の詩。