ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

蒸気機関

身体を駆ける 熱の魔物を シリンダーに 閉じ込めて すぐさま こころの 蒸気機関を 起動させる 上手くいくか どうかなんて やってみないと 分からない ── 取り敢えず、やってみる。

煤だらけのストーヴ

リビングにある 忘れられたストーヴ 電子革命前の品物だから 誰も寄りつこうとはしない 薪をもった少女は 動物に餌をやるように ストーヴのなかに 薪を焼べる ストーヴはひとりでに 炎を燃やして リビングの温度を 急上昇させた ── 誰かの想いは、動き出す原…

潤滑油

錆びついた歯車を 再び回すための 潤滑油 張り付いた苔を 落として 歯車と歯車の間に 油を注す からから音を 立てながら 歯車たちは 再び回り出す ── やがて、世界も回り始める。

リキッド・メタル

実態など もたないけれど 形あるものには なんでもなれる ぼくらも同じ 望んだものなら 何にだって なれてしまう ── それが、人の形をしていないとしても。

ユナイト

散らばった手足を 磁石のように くっつけて 拡がった街へ こころを探しに 人気のない路地に 最後のピースを見つけて 元あった場所へ はめ込んでみる 繋がり合った ぼくらの元に きみの街から 手紙が届いた ── きみの感じることも、ぼくの感じたこと。

積み直し

バラバラに 崩れてしまったものを もう一度 積み直す 元通りには ならないけれど 新しいものが 積み上がるはず ── 何度だって、崩して積み直せる。

フローター

ぼくはきみが 見えているけど きみにはぼくを 見ることは出来ない つかず離れず 地面に立たずに 宙に佇む ぼくを見ることが 出来るのならば きっときみも 宙に佇んで いるんだろうね ── 幽霊とは、また違う者たち。

ローラーコースター

敷き詰められた レールの上を 屑鉄造りの 乳母車で 唯ひたすら 上下左右に 時折ぐるぐる 回転しながら それでもレールを 外れることなく 終点を目指して 駆け抜けてゆく ── そんな人生、まっぴらごめんだ。

バロメーター

上がったり 下がったり 時には平坦だったり 常に一定な数値は 出ることはない 外側から 内側から 何らかの影響を 受けるのだから ── 海を滑る、波と同じだ。

トマトケチャップの湖

マンホールから 排水管から 公園の水飲み場から 至るところで トマトケチャップが 溢れ出す たちまち街は トマトケチャップの湖になって 一斉に海へ 流れてゆく 冷えて固まった トマトケチャップの湖は また新しい 土地へと変わる ── そこにあるのは、見たこ…

ホールケーキ

ホールケーキのように 切り分けられた ぼくらの街は それぞれ 他の国が 管理している ホールケーキを 貪るように 資源を根こそぎ 我がものにする いちごの山は 死んでも死守しろ ── 武器は、フォークとナイフだ。

藁人形の部屋

大きな地図を拡げて 藁人形と一緒に 釘を打ち込む 土地に掛かった呪いは なかなか解けない あとふたつ 打たれたならば この土地は 危ういかもしれない ── 打たれる前に、撃ち殺せ。

単離

目的の成分を 単離する 大掛かりな 実験に使うために 切り離した成分は そこだけ 切り離していいのか 本来 単離するべきものでは ないのではないか そんなこと 考えないだろうけれど ── 必要なものだけが、必要とは限らない。

分離

バラバラになったこころが ひとつに戻るまでには 時間がかかる バラバラになったこころに くっついた 別の感情を分離しないと いけないからだ ひとつずつ かたぬきみたいに 切り離して またひとつのピースを 完成させよう ── わたしときみの、間に出来た溝も…

間引き

養分の供給を 安定させるため 増え過ぎたものは 間引くのだ 資源には 残念ながら 限りがある それは誰にも 変えられないことだ ── 切り落とした、髪の毛のように。

採集

色んな星から 拾い集めたものは ピンで留めて 標本にしてある まだこの星の人たちには 見せていないし 見せる気はないけれど きっと見たら びっくりする様な ものばかりだよ ── 世の中では、信じられないものばかり。

取捨選択

銀の弾丸 ビスマスの迷路 アルミニウムの銅像 白金の万年筆 硫黄の雲海 亜鉛の甲羅 ぼくにとっての 宝物も きみにとっては 要らないもの 捨てた分だけ 新しいものは 手に入るかな ── ひとつ選ぶよ、残りは捨てる。

回収

ハイスピードで 駆け抜けた時 取りこぼしたもの 回収している 今なら コンクリートに 同化した ダイアモンドさえ ぼくの目には 良く映る 蟻一匹 残さず拾い上げて テラリウムのなかへ 仕舞っておくよ ── 通り過ぎた、思い出も一緒に。

副作用

不完全であるが故 予期せぬ作用が わんさか出て来る そもそも 不完全な生物の 作り出すものに 安全を求めること自体 愚かな行為だ ── 未開地への侵略、自然への冒涜。

依存症

好きなものを 好きなだけ そんな日々が 続いていたら もしもそれが 無くなった日は 禁断症状に 駆られるだろう 何かに頼って 生きることは 誰かにとって 必要だ しかしながら 頼ったままで 生きていたら やがて 何もかもを 失うだろう ── 自分の脚で、立てな…

回復の薬

傷ついた こころと身体を 癒やす薬 瓶に入った 液体でも 錠剤でも カプセルでも 粉末でもなく こころと身体が 本当に 欲しがっているもの ── それはあなたが、一番よく知っている。

普通じゃない普通の日常のなかで

いまわたしは 普通じゃない 普通のなかで 生きている きっと わたしが 作り出してしまった わたしの 望んでいた 世界なのだろう 何の変哲もない 世界を望んでいたのに こころのどこかで 破滅を願っていたのだろう ごめんなさい ごめんなさい だから わたしは…

真っ白なアルバム

古い本棚の片隅に 綺麗なアルバムが 置いてある いままでのことは なかったように 真っ白いアルバムが 置いてある きっとそうだ 今までのことは 夢だったんだ これからは このアルバムを 持ち歩いて 真っ白なまま 生命を終えるよ ── 誰にも見えない、素敵な…

生い立ち

ボタンを一個 掛け違えただけ ただそれだけで 世界はずれてゆく 世界ともずれてゆく ボタンを一個 掛け違えなければ ぼくは どんな世界に 居たのだろう ── 基本とは、基準とは。

空の抜け殻

抜け殻の中身は もちろん空だけれど 空の抜け殻 というものもある 空も脱皮を繰り返し より密度の高い 空を目指す こころが 溢れてしまったときに 唯一頼れる 場所であるように ── 誰にも見つからない、リセットボタン。

エンプティ・ラプソディ

からからの砂漠の上を 水滴がサーフィンしている きっとオアシスから跳ねた水が 未だ乾いていないのだろう 砂の下のぼくを横目に したり顔で 砂粒の上を滑ってゆく 気がつくと ぼくの上に たくさんの水滴が集まって 大きな水溜りが出来ていた ── 僅かでも、…

スポンジ・ボク

今はただ まっさらな 孔の空いた スポンジだ 水を吸ったら 吸った分だけ 膨らみ続けて 大きくなる 身体が乾けば また水を吸って 大きくなる 細胞のひとつひとつに 水が行き渡るように 乾いてもまだ 残るように ── こころも空っぽならば、水で埋めてしまえ。

狩人の詩

狩人は今日も 獲物を狙っている 森の木々の 隙間から 鋭い目つきで 狙っている 猟銃構えて 待っている 弾丸の入っていない 猟銃を構えて 今か今かと 待っている ── 我々がくたばるのを、待っている。

仮初の姿

万物のなかには 仮初の姿を もったもの達がいる いま歩いている道も 木陰に生えた草も 遠くに見える山も そこから撫で下ろした海も 上に拡がる空も 或いは目の前にいる あなたですら 本来我々の認識とは 異なるものなのかもしれない ── 擬態して、溶け込むも…

借りもの競争

我々は 借りものの身体で 醜い競争をしている どんなに足掻いても ゴールなんて ないというのに 借りものの星に 借りものの住処を建てて 生活しながら いつの日か 返さねばならぬ ときが来たならば 我々は 借りたものをすべて そのまま返すことは 出来るのだ…