ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

プレ・フル・ムーン

満月の前夜祭 きみの言って(い)た 儀式の手伝い ぼくはすっかり 忘れてしまって 砂漠のベッドで 眠ってしまった 目が醒めた頃 遠くに見える 銀色に光る月の子は 黒い太陽を 僅かに食べ残して 仮面のように 着けていた 霧がかった 雲に隠れて 遊んでいた ── …

貯蓄

今まで溜め込んだもの これから溜め込むむの ぜんぶ ぜんぶ 役に立つ だから少しでも 未来を見越して 溜め込んでおこう お金では買えない 確かなものを ── あなたの人生、すべてが役に立つ。

表面張力

グラスに水が 満ち満ちている 溢れそうに なるけれど 縁の瀬戸際で 留まっている 飲み干せば済む 話だけれど わたしは これくらいが ちょうどいい せめぎ合い ぎりぎりくらいが ちょうどいい ── エネルギーの、最高潮。

ニーハ温泉

はじめましてで こんにちは 見知らぬ人にも こんにちは 通り過ぎてゆく すべての人たち こんにちは こんにちは そんな温泉 あったらいいのに ── お湯に浸かって、さらに笑顔。

マグマ・ドグマ

我々にも流れているように 母なる大地にも流れている 噴出口から溢れるものは 紛れも無く生命の水だ 火山はこの星が 生きていることを見せる為 用意された 大事な舞台だ ── 忘れられかけたら、思い出して。

ヌク森の番人

柔らかな日差しのなかに その森は生い茂る 入り口に立つ番人は 二又の矛を持って 立っている 彼の周りには 冷たい死体が 転がっている 温もりを守る為に 彼は今日も 冷たい表情で 外敵を薙ぎ倒している ── 温かさとは、裏腹に。

道通

すべての道は 通じている どんな道を 通って来ても 最後は結局 一本の道になる だから迷うな 嘆くな きみの思い描いた 道を歩け どんなに痛みを 伴っても ── あの時感じた痛みのすべてが、未だ見ぬ道をつくっている。

痛信簿

今回もオール5だ 多分クラスで 1、2を争う 成績だろう 頑張って通っては みたけれど まだまだ 頑張らないといけない だって ぼくをいじめる奴らは オール1の 優等生なのだから ── 数字が大きくなるほどに、受ける痛みも増してゆく。

ペイント

どんな痛みも カラフルに 痛みに色を つけてみる 痛みを感じる その度に 様々な色が 溢れ出す つらい気持ちも 楽になれるよ ── 極彩色に、溢れる世界。

ヒサン間

とある屋敷の大広間 うっかり足を滑らすと 上から秋刀魚の大群が 降ってくる 身体には良いが ウロコだらけだ 洗礼を受けた者たちは 泣く泣く秋刀魚を 持って帰り 七輪を使って 美味しく食べるという ── 悲惨ととるか、恩恵ととるか。

ひよこ池

ここの池は 他とは違う 水の代わりに ひよこで満ちている ひよこで埋もれたワニや ひよこで埋もれたピラニアまでいる しかしみんな 何食わぬ顔顔で 泳いでいる ニワトリになったひよこたちは 池を飛び出し 何処かへ飛んでゆく また新しいひよこが 池底の卵か…

トーマ塔

十三階建ての 斜塔を登って 入り乱れている こころを片付ける 一粒一粒 大事に仕舞って 最上階から 天へと投げる それでも 時折見るのは 真っ赤な実のついた 植物の走馬灯 ── 塔はずっと、傾いたまま。

串刺し(愚かな人類)

巨人が焼いて 食べていたのは 人間でした 魅惑の 甘いファッションショーも 巨人たちが 入念に仕組んだ 罠だったのです 巨人たちは今日も 手に持った串で 人間を刺し殺します 対する人間たちは 甘い誘惑に負けて どんどん巨人に 串刺しにされてゆきます 巨人…

串焼き(塩)

備長炭が踊って(い)る あちちあちちと 火花を散らして 天井では 何かの肉が 焼かれて(い)る 時折油が 滴り落ちる すると あちちあちちと またもや炭は 弾けて踊る 焼き上がった 何かの肉は 巨人の口に 放り込まれた ── 焼き上がった頃、火花は踊り疲れて眠っ…

串だんご(みたらし)

黄金色のベールをまとって 舌のランウェイを闊歩する 魅惑の甘い吐息は ぼくを夢見心地にさせてくれる 白い岸壁ですり潰した 白い肌は 最も容易くほぐれてゆき すぐさま胃酸の海にダイヴする これにて優雅な ファッションショーは閉幕さ ── 一瞬の、甘い誘惑…

水深

水のなかを 深く深く 潜ってみる 光は段々 遮られ 音も段々 しなくなる 空が宇宙なら ここが 無なのかも知れない ── 忘れられたものが、彷徨う地帯。

血筋

ぼくらの血管には みんな同じ血が 流れている 生命の木から 採取した 真っ赤な血が 流れている この血が途絶える ようなことが有れば その時はぼくが木になり 血を分け与えよう ── みんな、生命の木になれる。

覇気

身体の底から 湧いて来る 邪を一掃する 神秘の力 取り入れた物質は 覇気になって 表出する 覇気が無いのは 気の元が 淀んでいるのかも知れない ── こころも混ざり合い、より強いものとなる。

トリカゴ出兵

めでたく 強化改造を施された 精鋭部隊 来たる敵は 海の向こう側だ お国のために さぁ戦え 銃火器なんて 使わない 身ひとつ乗り込め 特攻だ これが 新時代の戦争だ ── 身ひとつで、百人力。

真昼の原爆

気持ちいい程に 降り注ぐ 放射線の矢を 身体に浴びて 今日も健やかに 通りを歩く 魚眼を埋め込んだ 下を向いて 歩く人々 蟻の行列を 見下しながら 歩いて(い)る おまけに耳も 塞いで(い)る 相も変わらず 弱いものいじめが 大好きなのさ 空はこんなにも 素晴…

浮雲の大艦隊

朝焼けを浴びて 浮雲の大艦隊は 敵地を目指す 彼らの敵は なんだろう ぼくらの敵も なんだろう ぼくらは一体 何と戦い 傷ついているんだろう ── 撃たれてもいないのに、死亡する人々。

金星のヴィーナス

翼の生えたシュノーケルで 雲の海へとダイヴする 時折唸る雷は 凝った肩には丁度いい 磁石の岩に 引き込まれぬよう 注意深く かけらを探す きみの落とした 魂のかけらさ 手が空いて(い)るなら 手伝っておくれ ── 手持ち無沙汰の、ぼくの手には余る。

錬金術のメカニズム

この世のシステムは 錬金術である すべての物事に 税金をかけ 支配者だけが 得をする 生きて(い)るだけで 金がかかるのは この素晴らしいシステムの 作用するところによる ただし 年季の入ったシステムなので 色々ガタが来ているところだ 隙間風の吹く ネズ…

金獅子の絵画

幕が上がると 金獅子の絵画が 姿をあらわす あたり一面には 立髪と同じ色をした タンポポの花 太陽代わりの 向日葵も咲いている 絵のなかの獅子は 悠然とそこに 佇んでいる いつか見た 英雄の姿のように ── 静かに出番を待つ、希望の光。

青ざめたアクィラ

空高く 飛ぶ者たちは 知っている 見てしまった この世の真実 地を這う者には 知ることの 出来ない真実 伝えようにも 言葉が通じない 誰か聞いてくれる 者は居らぬか ── わしの言葉を、伝えておくれ。

ブルー・トレイン

思い出の 線路を走る 青い電車は 思いの繋がる こころの駅に 各駅停車する たとえきみが ぼくを忘れても また思い出せば 駅で会えるよ その時のための 切符を一枚 渡しておくから ── きみがぼくを忘れても、ぼくは君を忘れない。

群青色のトンネル

窓から海を見渡すと 群青色のトンネルが うねりをあげて 延びていた いずれこの街も トンネルの口に 飲み込まれて 群青色の天井を 見上げることに なるだろう 出口の先には 水色の天井が 拡がっているだろうか ── 淡い期待と、濃厚な不安。

悪路を越えろ

意外に険しい道のりだ ここに来るまでに こころは五十回ほど折れたし 骨も何本か折れた 足の小指だって 曲がっている それでもまだまだ 色んなものは 折れ続けるだろう この悪路を歩いて 生えている木に ぶつかり続けて 折れるたびに立ち直り 折れるたびに強…

悪者の仮面

誰かのせいに する人が居るから そんな人たちのために 自ら悪者になる人もいる どんなに辛くても どんなに苦しくても 自分が世界を 作っていることに 彼らの気がつくまで 悪者の仮面を 被り続けるのさ ── 二度と元には戻れない、苦渋の選択。

悪意の街

今日も街では 悪意が渦巻く ぼくがわたしが こんな状況なのは と文句を言って 最終的には 誰かの そして 何かのせいにして 気を紛らわす 悲しい人々の 住んでいる街 いつになったら いつかまた そんな日はもう 二度と来ない 今を変えなければ 二度とこの街か…